orenobook’s diary

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『なぜ、あの会社は儲かるのか』

『なぜ、あの会社は儲かるのか』

田英夫・山根節 著

日経ビジネス文庫・2009年6月刊

ISBN978-4-532-19498-7

 

文庫サイズながら、中身の濃い本だった。

企業の取る戦略と、それによる財務インパクトとを各章で併記してある。2009年の本なので、事例として挙がっている各企業の状況はもちろん変化していて、当時とは戦略も主力製品も業績も、変化している。昨今だと、新型コロナによる外部環境の変化を相当受けている業界あるいは企業が多いことだろう。

 

各章の中に、基本となる理論が埋め込んであるため、事例に偏らず、かといって、理論をベースにした展開もあり、そこに財務的な観点の執筆が加わっている。手軽に読み返せる点も魅力だ。その割には、読了するのに長めの日数がかかってしまった。まあいいか。3冊併読中なので。備忘録的に、下記抜粋。私の感想と、本文からの抜粋混在。

 

第1章:差別化、高級路線は儲かるのか?~帝国ホテルと東横インの利益率の怪

差別化戦略は他社よりも高い価格がつけられるはずなので、当然儲かっているはずだが…。

競争戦略の基本は3つ。生産量を増やして競合他社よりも低いコストを実現する「コスト・リーダーシップ戦略」、価格以外の要素で顧客から違いを識別される何かで差をつけて競争する「差別化戦略」(シャープのヘルシオ)、特定の買い手や市場に特化する「集中戦略」(高級オーディオ)。

 

2番目の差別化戦略についてコトラーは次の5つ(P32)を挙げる。「①製品による差別化」「②サービスによる差別化」「スタッフによる差別化」「チャネルによる差別化」「イメージによる差別化」

 

大丸の奥田務社長が行った改革について(P50)

百貨店では以前から低収益性が指摘されながらも現場の構造改革にはあまり積極的ではなかった。百貨店の現場では、仕入先との取引形態が商品によってまちまちであり、食品から毛皮まで100万点以上のアイテムを扱っているため、取引を完全に把握するのは難しく、標準化が困難との理由からだ。顧客の要望に合わせて、現場マネジャーの裁量でフレキシブルに売り方を変える。全体として非効率であっても、それが百貨店でしょ、というジョーシキが蔓延していた。

しかし、私の場合、「現場」を知ることは必須だと考えているが、「現場!」と叫ぶひとたちの常識を、いつも疑うようにしている。それは、変化している顧客や市場を恐れ、知らないふりをして、自分が変化しなければならないことに気づかない、あるいは変化したくないことの表れだととらえているからだ。でも考えてみてほしい。いつの間にか、近所の文房具屋やコメ屋はなくなり、大型商業施設でまとめて買うことのほうが圧倒的に多くなってきた。それらの施設は、売り場が標準化されていて、文脈で商品を見つけることができる。百貨店の場合、来店客層によって陳列する製品は大きく変わるべきだし、顧客もそれを求めている場合がある。ただし世間のボリュームゾーンに対象顧客の機軸を求めた場合、ある程度売り場は標準化されるのではないだろうか。そのほうが企業全体としては儲かるのではないだろうか。書店で言えば、イオンモールに多い未来屋書店がそうだ。この書店は基本的に、世の中のニーズをすべて店舗で表現しようとは思っていない。80%でよいと割り切っている。だから、2000坪の店を開きませんか?と問屋から誘いがあっても、断る。200坪から400坪のテナントで効率よく売るノウハウを構築してきたし、それをブラッシュアップしていくことが最善だと考えているからだ。

話が脱線したが、大丸の奥田社長は、「現場のノウハウ」や「匠」の存在を標準化することに挑戦した。売り場を接客パターンごとに4つに定義した(P51)。

コンサルティング売場②対面販売売場③セミセルフ売場④セルフ売場

接客など客から見える部分ではサービスのレベルアップをしつつ、裏側業務にメスを入れて、効率化を図ったのである。その後、時代が変わって外部環境がさらに変わってきているので、現在の戦略はまた変わっているだろうし、うまくいっているとはいえないかもしれない。そもそも我が家では、デパート自体に行かなくなった・・・。

 

第2章:あんなに安売りして儲かるの?

ドコモが携帯端末を0円で売り、アプリのセット契約と高い通信料で大きく儲ける戦略や、キヤノンのプリンタインクにみる「累積型モデル」。ジレットモデルである。

 

第3章:ポイントで得する会社、苦しむ会社

省略。

 

第4章:製品の寿命は会社の寿命?

製品ライフサイクル(PLC)には、導入期、成長期、成熟期、衰退期がある。難しいのは、自社の主力商品が現在、どの位置にあるかを正確に把握することだ。第1章ともつながるし、自社製品が儲かっていても、VUCAの時代の現代において、そしてパソコン1つ、いや、スマホ1つでビジネスができる時代には、小さなベンチャー企業(しかも個人だったりもする)が急成長して市場を作って顧客が熱狂してしまったがゆえに、打ち出の小づちだった自社製品が急速に儲からなくなり、市場から事実上排除されてしまうこともよくあることだろう。それでもその企業の中には、「うちの製品はとってもいいんだけどなあ」の現状満足を優先することがままあるだろう。その良さが顧客に伝わらない時点でアウトであり、そうなる前に常にブラッシュアップしておくべきなのだ。

それが、製品ライフサイクルの延命(P132 セオドア・レビット著)である。

なぜ商品には寿命があるのか。ポーターが示した5つの競争要因の考え方で整理できる。(p134) ①買い手(買い手の交渉力)②新規参入業者(新規参入の脅威)③代替製品・サービス(代替品の脅威)④売り手・供給業者(売り手の交渉力)⑤競争業者・業者間の敵対関係

したがって、事業ポートフォリオPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の出番である。(P138) 市場成長率と相対的マーケットシェアで4つに分類する。

以下、出典はWiki

①花形 (star)
(成長率:高、占有率:高)
成長率・占有率ともに高い伸び盛りの状態であり収入も大きい反面、成長局面にあるため競合も多く、設備投資や開発費など多額の追加投資を必要とする状態[3]。高シェアを維持し続けることで「金のなる木」へと育てるべきであるが、シェアが低下すれば「負け犬」となる。製品ライフサイクルにおける導入期 - 成長期に属する。
②金のなる木 (cash cow)
(成長率:低、占有率:高)
シェアの高さから大きな利益が見込めると同時に、成熟局面にあるため追加的な投資もあまり必要でなく稼ぎ頭となっている状態[3]。ただし、市場は既に成熟局面にありそのままでは会社が衰退してしまうおそれもある[3]。製品ライフサイクルにおける成熟期 - 衰退期に属する。
③問題児 (question mark)
(成長率:高、占有率:低)
成長率が高い反面、占有率が低い分野。多額な投資資金が必要な一方、多くの資金流入は見込めない。シェアを拡大しつつ成長を高めることができれば先述の「花形」となるが、シェアや成長が低いままだと後述の「負け犬」の製品となる[3]。製品ライフサイクルの導入期 - 成長期に属する。
④負け犬 (dog)
(成長率:低、占有率:低)
成長率もシェアも低く、利益も上げられないまま市場競争に負けてしまっている分野であり早急な撤退を検討すべきとされる[4]。投資次第では先述の「金のなる木」になりうるが、深入りして撤退の時期を誤ると損失の増大をもたらす[4]。製品ライフサイクルにおける成熟期 - 衰退期に属する。

 

第5章:なぜ、赤字会社が黒字会社を買える?

省略

第6章:稼いだ利益を何に変えるべきか?

省略

 

 

 #山田 英夫 #山根 節 #MBA #利益